Film log

そういうところです。

Mary Poppins Returns

おそらく、わたしが人生で一番見た映画はMary Poppinsだと思う。
子供時代、となりのトトロといい勝負で毎日のようにビデオを再生していたから、すっかりテープも延びていることだろう。
この感想を書くにあたって、前作の制作が1964年だと知った私は、あまりにも驚いた。何故なら、子供時代の私にとっては作品の中の何もかもが産まれたてのような輝きをもっていたからだ。
魔法で部屋を片付けるシーン、絵の中へ入っておめかしをして楽しむシーン。特に階段の手すりに座ってエスカレーターのように登っていくシーンが好きだった私は、家の階段で妹と一生懸命に練習した事も思い出深い。(もちろん魔法なんて使えないから、強引に腕力で登るのである!)
とにかく私は、Merry Poppinsにここまで大きく育ててもらったと言っても過言ではない。

ところが、本作を観ていて懐かしいなぁと感じた途端、私は急に寂しくなってしまった。あの子供時代にひたすら感じていたワクワクしたものが、現在ではなく過去になってしまったことに気づいたからだ。
私が好きな俳優がマイケルを演じているのを見て「可愛いなぁ」と思ったり、ジェーンの衣装が素敵だなぁと観察したり、前作のオマージュにクスっと笑えたりする。こういった見方というのは10歳に満たないような子供には出来ないものだ。
勿論、こう言った見方が悪いと言っているわけではなく、様々な見方が出来るからより映画が面白く感じる、というのは事実である。
ただ、真っ白なキャンパスに突然インクをぶちまけるような、空っぽの脳みそに与えられる衝撃はもう得られないのかと思うと、私は知らない間に子供を終えて大人にしまったのだなという、失ったものへの感傷だけが虚しく残るのだ。

私の風船はまだ空に連れて行ってくれるのだろうか。